7.揺らぎすぎないで10年先の姿を想像する
池照:大学院に入学した頃は、
独立するなんて、予定はしていませんでした。
これまでと変わらず、ビジネスの現場で
バリバリに働いて行くと思っていました。
独立の「ど」の字もなかったので、
周りのみんなは、逆にびっくりしたんじゃないかな?
— でも、その形にしてみようって、ひらめいたんですよね?
池照:一番やりたかったのは、
子どもと一番一緒にいたい時期に
子育ての時間を確保すること。
そして、人事という軸で仕事を続けること。
はっきりいうと、ICは3年くらいで辞めて
また組織に戻るのかなと、自分では思っていました。
— 法人化の準備は、すぐに進めたのですか?
池照:はい。
それは最初にクライアントになってくださる企業にとって、
個人事業よりも法人化した方が良いと分かっていたからです。
それから、会社を作ること自体はそんなに難しいことではないと。
それは、大学院に行って知ったことなんです。
「独立自体はそんなに難しいことではなく、
問題はそれを継続させていくことだ」って。
— すでに10年。この働き方が向いていたということでしょうか?
池照:「向いている」と
思ったことはあまりないです。
でも「自分の目的を果たす働き方のひとつ」
であったことは確かです。
「子育ての時間確保」と
「できるだけ経営に近いところで人事の仕事をする」
この2つを実現させていますから。
この働き方を選んで、
仕事(ワーク)と生活(ライフ)をバランスさせるよりも、
「ブレンドさせていく」という考えになりました。
— 「ブレンドさせていく」ですか?
池照:具体的には、
「どう生きたいかから、どう働きたいかを選択する」
という視点です。
この10年の私の「生き方」の目的に、
IC問う働き方は合致しています。
そう言う意味では「向いています」ね。
もし次の10年の目的が別であれば、
働き方や仕事との関わり方を変えていけば良いと思っています。
ICかもしれないし、組織に戻る形かもしれない、
正社員、パート、生き方を考える上で
一番良いものをその時に選べるようにする。
こんな働き方が日本で選べることが大事なんだと、思っています。
もう一つ、向いているかどうかは
あまり考えたことはありませんでしたが、
私は「仕事を楽しむ」達人なんです。
少なくとも、そう信じ込んでいます。
特に、どんな仕事でも
自分で選択したのであればなおさらです。
— 両立のコツというか、ヒントはありますか?
池照:子供を授かってから、
私は仕事への考え方が、大きく変わりました。
人生の役割を考えるようになったんです。
子供に恵まれた時期が、
ちょうど仕事を始めてから10年ちょっとたった頃。
では、私を必要としてくれている家族が増えてからの10年、
そして20年はどうやって生きていくんだろうと。
その視点で、ゆるやかに
10年毎の自分のステージをを考えてみたんです。
子どもに恵まれた最初の10年は、
仕事の時間よりも
「自分が大事だと思う時間に優先順位を置こう」ってことです。
私の場合は、人生を4つのパートに区切り、
それぞれにどのくらいの時間とエネルギーの配分をするかを
考えてみることからスタートしました。
4つは、仕事、社会活動、自分、家族&友人なのですが、
これで区切って考えてみると
子どもが家族に入ってからの10年は、
家族&友人の部分が増えて、
仕事の部分を少しセーブ気味にするっていう
配分が分かってきました。
つまり、どう生きたいか、何がしたいかを考えてから、
どう働くか、どう時間を使うか、を考えたということです。
そうしたら、ICという働き方に出会った。
— やりたいことより、雇用形態での選択が中心になる人も多いですよね?
池照:いろいろな考え方があると思いますが、
正社員、パート、IC、などは、あくまで「働き方」の多様性であって
「やりたいこと」を実現するためや、生活のための
手段だと思っています。
ただ、子育てなどの時間的な制約がある場合は、
「やりたいこと」だけのために
働き方を選択できないこともあります。
時間や場所などの物理的な問題を解決するためには
「働き方」を変えざるを得ない場合もある。
そんなバランスと、どのくらいの時間枠で
それらをコントロールしていくのかを、
ゆるくでもいいので、自分で考えたり、
描いたりする時間は、必要かと思います。
— その考え方を身につけることが大事?
池照:そうですね。
私はこの4つのパートに区切る方法を
定期的に自分の生活に取り入れていますが、
年に1度でもいいのだと思います。
例えば、子どもが10歳になるまで、
家で一緒に過ごす時間を最優先にしたいと考えるのであれば、
労働時間が短くなる。
平日は仕事をバリバリして、
子育ての部分は信頼できる方にある程度お任せして、
でも、週末はべったりと過ごす。
それを、じぶんで選べればいいのだと思います。
年に1度でも、
「これから10年はどうしようかな。10年後、この子は〇年生だな、
どんなことに夢中になっているかな」って考えてみる。
そうすると、せいぜい子供とべったり過ごせるのは、
子どもがうまれてから最初の10年に
凝縮されていることが分かります。
次の10年は、すこしずつ親離れ、
子離れしなければならない時期になるので。
こういったことを時々思い出すだけでも、全然違うと思うんです。
— 先のことに目を向ける余裕と機会がないのかもしれないですね。
池照:確かにそうですよね。
実際には、この10年後の事を考えたら、
仕事をセーブするのであまり仕事に熱が入らなくて、、、、
なんて考えの方もいらっしゃいます。
ただ、私は逆にこれを
その先の10年に活かす形で使ってほしい。
だから、例えば仕事の時間を少し減らす選択をしたら、
その減らした時間で、
どうやって先の10年を見据えて
自分に対してゆるやかな投資ができるかを考えてみる。
「あ、3年後に子どもが小学生になったら、
夕方には家に帰ってくる生活にした方がいいな」とか。
実際に、私はそう考えて息子が小学校に上がる前に
大学院を修了することを計画に入れました。
ですが、何も大学院に行くことだけではないと思います。
私のキャリア講座でこの方法を習得された方は、
時間がなくても
「月に1回は自分が目指す仕事についている人に話を聞きに行く」や
「10年後に目指す仕事関係の本を月に1冊読む」
などからスタートし、
実際にご自身で描かれたキャリアを歩んでいる人もいます。
やるか、やらないかだけかなと。
あとは、個人の選択ですね。
— 見えている「選択肢」がすごく狭いのかも知れないですね。
池照:そうなのかも知れないですね。
でも、かちっと決める必要もないし。
おそらく働き続けているだろうなとか、
こどもが大学生になっている頃だから、
じぶんの時間がずいぶん持てる。
友達と旅行にも行きたい、でも費用は旦那に頼りたくないなとか。
その頃には親も年取っているので、
土日に少しみてあげる時間も取りたいなとか。
そういうイメージは、誰でも出来ると思うんです。
それに向かって、
「じゃあ、今なにをしたらいいのか」を考えてみる。
現時点では仕事の時間がさけないなら
パートとして関わることも、
目的を達成するための一つの方法ですし。
— 雇用形態ではなく仕事の中身で、という感じですか?
池照:「仕事の内容」と「働き方」は
少し分けて考えてもいいということです。
これからの時代、
「正社員でないとできない仕事」がもちろん残りますが、
「正社員じゃないからこそできる仕事」もあります。
そこをどう見極めるか。
それから、会社や誰かが
その働き方を提示してくれるのを待つことなく、
自分で提案していけばいいのだと思いますね。
最初はいろいろ言われますが。。。
わたしも契約社員になったりした時に、
色々、言うひとはいたんです。
「契約社員のくせに、こんな仕事して」とか。
そういう事を言うひとって、いっぱいいるんですよ。
そういうひとは絶対いる中で、
「ひとの話にあまり揺らがない自分」を
作って行かなきゃいけないなって。
— そういう経験もされてきたんですね。
池照:なにか言われた時に、
それに一々反応していたら、
やりたいことは「出来なくなる」と思うんです。
— 周囲に敏感になりすぎてしまうのでしょうか?
池照:そうですね。私達、真面目ですから。
そういうのは、それこそ、この仕事を始めて
EQ(感情知性)みたいなことを知ってから、
「あぁそうか、揺らぎすぎるっていう傾向は女性に多んだな」って
いうことを感じています。
今、女性リーダーの方たちに色々提供しながら、
「揺らがない自分をどうやって作っていくか」っていうことを、
一緒に考えたりしているんです。
そこに気づくだけでも全然違うと思いますよね。
「反応するな」とは、言わないんですよ。
バランスも必要なんですけど、揺らぎ過ぎていて、
本来やりたかったことを見失っては、もったいないです。
10年単位で考えても、時間は限られていることが分かります。
自分の人生ですもんね。
— いろいろなお話しを聞けて楽しかったです。ありがとうございました。